Tohoku University Rowing Club

腰痛の予防

 

腰痛の予防 Boathouse Doc

Q:マスターズのコーチですが、腰痛を予防するのになにか出来ることを知りたいのです。

 

A:腰椎障害(腰痛)の可能性を減らすためにトレーニング面でできることが3つあります。ローイングという運動が腰椎に大きな負荷を与えるということを忘れてはなりません。この部分の負荷が病的な変化をおこすほど強いものであることは研究ですでに証明されています。最も多くみられる障害、椎間板ヘルニアや疲労骨折はこれらのストレスが長い間続いた結果と考えられますが、トレーニングプログラムの中で系統的に腰椎に関して注意することで予防することが可能なのです。コーチが障害を防ぐために必要なことを第一に考えるならば、漕手も同じようにするはずであるということを忘れてはなりません。エルゴでよいスコアを出すこととシートレースで勝つことがクルー選抜に必須であることは論を待たないのですが、予防プログラムに留意することでベストの選手をクルーに入れることが可能となるのです。

 

第一に、ローイングテクニックです。ボートであろうとエルゴであろうと、漕手は尻逃げやキャッチでの叩き込みなどをしないようにしなければなりません。このような問題は腰椎下部にストレスをかけ腰椎を痛めやすい姿勢をつくるのです。漕手には、まっすぐすわり、リカバリーでは早くボディセットし、キャッチまでの間とドライブの前半まで一定に保つよう教えなければなりません。骨盤(シート)はこの間、体幹の下にあるべきで脚からオールへの力の伝達のために安定したプラットフォームをつくらねばなりません。また、障害を防ぐためにはつねにボートを水平に保つようにすることも重要です。

 

第二に、トレーニングピースは腰椎ヘの負荷を減らししかも生理学的な目標を達成できるようにデザインしなければなりません。ステディステートはホイールが長いピースの間で過度に減速しないように、最低の抵抗(コンセプトエルゴType CDrag factor100-115)で行うべきです。同じように乗艇でもステディステートでは軽い負荷で行うようにすべきです。ストロークレートだけでなく流れと風にも注意して下さい。

 

また、選手には過度の抵抗で“パワーピース”をさせないで下さい。Drag factor130-140をこえるような抵抗での、低いリズムでのフルパワーピースをしてはいけません。抵抗を上げてやることで得るものは何もなく腰を痛めるだけです。このタイプのワークアウトでは一本一本のストロークの間にホイールはかなり減速しホイールを再加速するのに必要な力は下部腰椎にとってかなりの負担となるのです。

 

最後に、腰椎強化プログラムは脊椎をとりまいて支持する筋肉群を鍛えるのに必要です。脊椎はいわばサーカスのテントのような構造です。メインの支柱は脊椎にあたりますがそれのみではテントを支えることはできません。外側の小さなポールとロープが構造を安定させ、これが体幹の筋肉群にあたります。このようにあなたのプログラムには体幹とハムアウトリングを強化しストレッチするエクササイズを加えるべきです。こうすることでストロークの間の骨盤とその姿勢をよくすることができます。コーチは漕手に継続性を高めるためにエクササイズの間号令をかけたり重要性を説明する必要があります。エクササイズにはマッケンジータイプの背部伸展、ウィリアムズエクササイズ、スイスボールエクササイズ、ハムストリングのストレッチをいれてください。ちゃんと説明しないと漕手はその重要性に気づかないものです。コーチとしてあなたはかれらが正しくエクササイズを行っているかを確かめなければなりません。

 

ローイングが腰椎に重大なストレスを加えることは間違いありませんが、これらのヒントができるだけリスクを減らす助けになるはずです。

 

[: 舟山裕士, Boat House Doc (iRow.com)]

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