Tohoku University Rowing Club

Coaching the ergo

漕手は多くの時間をエルゴに費やしているが、有効に時間を使っているのだろうか.数人のトップコーチにエルゴで何をすべきか、何をしてはいけないか語ってもらった.

By Chris Milliman and Caroline Grogan

ほとんどの漕手にとってコンセプト2エルゴメーター(今はインドアローワーと呼ばれている)なしのボートなど想像できない.好むと好まざるとにかかわらず、エルゴはいまや漕艇競技ではひろく使われている.しかし、エルゴはパフォーマンスモニターによっていろいろなフィードバックをもたらしてくれる一方、水上で漕ぐことがもたらすことを再現することはできない.エルゴは艇のような動きがなく完全に安定しているし、フィニッシュで水をかき揚げることもない.

エルゴに費やすトレーニングを最大限に活用するためにUS Rowing Magazineは数人の米国のトップコーチにインタビューした.艇に乗ったときにエルゴで得たものを最大限に引き出すために彼らがエルゴで選手達にどのように指導しているのか聞き出した.

1) Erg for Technique, not just splits.

(エルゴは単にスプリットタイムを向上させるためだけではない、技術向上のためにあるのである.)

まず私が最初にいいたいのは鏡を用意することです.第一エルゴは退屈なものです.特に冬の半ばはそうですが、エルゴは鏡を使うことでもっと面白くなります.コーチのアドバイスを聞いて次に鏡に映った自分自身をよく見るのです.少し面倒くさいかもしれませんが非常に大切なことであると思います.そうでないとやっていることが間違った癖をたたき込むことだけになってしまいます.(Chris Clark、ウィスコンシン大学、対校重量級コーチ)

まず思い浮かぶのは、私がテクニックをエルゴで教えていると言うことです.他のあるコーチはやっていません.エルゴであるおかしな事をやっている人が時々いますが、艇に乗ったときには問題にはなりません.しかし、基本を私は重要視します.たとえばコネクションとか水平に動くことなどです.これらを私はエルゴで教え選手は艇上でこれを表現するわけです.(Lori Dauphiny、プリンストン大学、対校女子コーチ)

ひたすら漕ぐ.これはランニングやスキーでは得られない特殊な運動なので漕ぐことが最善の方法なのです.技術的には、艇を漕ぐのと同じようにエルゴを漕ぎ、多くのおかしないたずらのような動きをマネしないのが確かな方法であると思っています.スコアを上げようとしてやりたくなるようなことですが、決してボートを早く進めるものではありません.(Dan Roock、コーネル大学、対校重量級コーチ)

エルゴでは私はかなり厳密に教えています.選手の艇上での動きとエルゴでの動きには類似点があると思っています.しかしそれらは必ずしもおなじではないのです.たとえば、エルゴでは腕でわしづかみにしたくなりますが、誰でも知っているように、また時には初心者はそのようなことをある程度エルゴでやりますが、艇上ではあまりやらないものです.しかし、通常は艇上では何か他のことがおこっているということです.わしづかみにすることが肩を突っ張るような動作に変わって表れていることがあります.ですから選手が艇上でどう漕ごうとしているのかエルゴを通して知ることができるのです.

私は他のコーチとエルゴのことについていろいろ議論することがあります.カレッジプログラムから戻ってきた人たちから受ける感想は、それをほったらかしてなるがままにしておくだけということです.ボートを犠牲にしてエルゴでよいスコアを出すようには漕いで欲しくありません.そして、私たちが心配しているのはスライドコントロールです.それは直接に、つまり、若い連中がエルゴでやることは艇上でやろうとしていることと同じなのです.しかし、それは違う形でみえてきます.エルゴで技術的に問題があれば、それは艇上で技術的な問題があることを意味します.正確には同じ問題ではないかもしれませんが、問題は必ずあるはずです.エルゴですごいやつは水の上でもすごいのです.(Todd Jesdale、男子ヘッドコーチ、シンシナチジュニアローイングクラブ)

2) Hands, hands, hands

手の高さの問題は人々を最も悩ませる問題です.というのは好きなようにどのようにも動かす自由度があり、いろいろな人が様々なことをするからです.艇上ではかなりの部分その通りに表れていると思います.キャッチエンドで突っ込んだり手を下げてしまう人はボートに戻ったときにもそれを繰り返すものです.

何度も何度も繰り返しエルゴで表現しその通りにやろうとすることができるのがエルゴのいい点です.エルゴでの動きを艇上で再現しようとすると大変ですが、エルゴでは意識したり苦労せずして再現できるからです.さらによい点は、ある領域を超えてただあるリズムをもって回し続けることができることです.いい運動をするということよりも、自分の動きをまったく意識する必要がないということがいい.ただひたすら引くことがすべてなのであるということがあってもいいのです.(Dan Roock)

ときどきハンドルを顎の高さまで引き上げて漕いでいるのを見ることがあります.これは必ずしもボートでの動作には表れてはこないのですが、彼らはよいスコアを上げるために必要なこととしてやっているようです.わたしがボートで漕ぐようにエルゴでも漕ぎなさいと指導しているにもかかわらずです.よいスコアを上げようとしてやる突飛なモーションはやめさせるべきです.(Lori Dauphimy)

足からその先までの部分でハンドルをさげていくのがいます.私は実際多くのひとがやっているのを見ています.これには2つほどの影響があります.ひとつは見かけ上次のことに影響します.私は彼らをホライゾンローワーと呼んでいます.手が脚のほうへ下がってくると靴の留め金のある部分にちょうどあたってしまうのです.もう一つはオールのハンドルには少しの重さがあるということです.そしてボートでのオールのハンドルの重さとは反対なのです.水面からオールを離しておくためにはハンドルに重力をかける必要があり、少なくとも手の重さをかけておく必要があるのです.(Todd Jesdale)

3) Make the Connection(コネクション)

私が最も重要視している二つの問題はコネクションと水平方向の動きです.エルゴではかなりたやすくコネクションについて練習することができます.自分自身をコーチとして自分をオールの手前に支えることができ、両手でぶらさがることでより多くの抵抗をかけることができるからです.あるいは目盛りを10に設定しハードに漕ぐのではなくてエルゴの抵抗を増すことにより、キャッチエンドでのコネクションとサスペンションをより感じ取れるようにすることが出来ます.そうすると二つのトリックが生まれてきます.コーチがハンドルを持ちテンションをかけるようなのと同じ効果です.怪我をするようなバカなことは絶対にしないでください.ただコネクションの感覚を見つけだすよう努力するのです.

次に水平方向の動きです.われわれのボートハウスには鏡があります.これはすばらしい武器です.私は鏡のほうへエルゴを移動させ、片方はエルゴに面し一方はエルゴに平行になるようにします.そうすると漕手は自分の動きの全部を見ることが出来、水平方向の動きを練習するときに最も役に立つのです.鏡の正面を向いているか鏡が側面にあるかのいづれでも、わかるのです.肩が挙がっているでしょうか、腕を曲げているでしょうか. これはボートでは得られないビジュアルなフィードバックです.(Lori Dauphiny)

私はエルゴをキャッチまでのシートの水平方向の動きと水を足でつかむ感覚を教えるのに使っています.手にオールをもっていないほうが感じやすいからです.(Scott Armsrtong、対校重量級コーチ、ダートマスカレッジ)

4) Capture the Moment(瞬間を捉える)

私は怠け者なのでもうやっていないのですが、私が経験したもう一つのやり方があります.みんなはビデオカメラをもっていてエルゴで漕ぐのをビデオに撮ります.ビデオカメラに接続したモニターをセットアップして、自分たちが漕ぐ姿を見ることが出来ます.しかし、鏡で同じようなことをするのとは少し違います.でも、ビデオカメラはエルゴ部屋に持ち込むのに悪い器械ではありません.ビデオカメラでとって後で選手に見せて、実際にスローで見せ何をやるべきなのか示すことができます.(Lori Dauphiny)

5) Avoid at All Cost!

いいスコアを上げようとしておかしなスタイルに変わっていくことがあります.やめなさいと私がいったことのひとつは顎までハンドルを引き上げることです.これは艇上では決してしないことです.あるいは極端にレイバックをとることです.これも艇上ではしないことです.選手はスコアを上げるために良い方法であると信じてやっていることなのです.

わたしは選手に正しく漕いでおなじスコアを上げるようにいっています.時には選手がスコアを上げようとして変にエルゴで漕いでいてさらにおかしな方向へ変化していくために直すのに骨が折れることもあります.ひとつはハンドルを顎の高さまで引き上げることで、わたしが彼らがなぜそうするのか理解できません.特に体の小さな選手は胸を通り越して顎のところまでハンドルを引き上げてストロークを長くすこしでもホイールをまわそうとするのです.(Lori Dauphiny)

エルゴで技術的な間違いを犯していてそれがボートに表れている漕手はたくさんいますが、一方で、艇上ではうまく漕げるのにエルゴではひどい選手もいます.(Scott Armsrtong)

もし、Gamut型エルゴがあるならば、少し使ってみてください.C2の使用は単なる習慣になる傾向があると考えているからです.それが悪いことだとはいいませんが、真にエイトをうまく進めるために必要なスピードを教えてくれないのです.Gamutをハードに漕げばそれはより教えやすくなります.一方、C2でよりハードに漕げばより難しくなります.これは本当に正反対なのです.エイトでトップスピードで漕いでいれば明らかに、これはイージーでまた艇は軽いのです.これはコンセプト2の欠点なのです.私はできるだけGamutを漕ぎなさいといいたい.

コーチ達をチェックしましょう、コーチから五分間だけ基本的なことを聞き出すのです.エルゴとタンクが非常に似ていることに気づくでしょう.うまく漕げないことには言い訳できないのです.環境は完全にコントロールされているし、天候の影響はなくエルゴは完全に安定しており、固定されているからです.こういったあとで私のクルーをみると彼らが必ずしもエルゴでは完璧には漕げていないことに気づくでしょう.でも、それでもなお、水上でみるよりもずっとバリエーションは少ないのです.エルゴでうまい選手は、エルゴを漕ぐ限りはどのように漕ぐかによらず、必ず艇上でもよい選手なのです.これは間違いのないことです.

フィニッシュの最後の部分で指先でハンドルを引っかけて、そして次に手首で上方へひょいとはねるようにする理由が私は理解できません.それが艇上でやる動作とは違うという理由で私はやめさせています.艇上でやることを正確に再現させてください.これが私たちがここでやろうとしていることなのです.私たちがこのようにしてエルゴで多くの時間を費やしているのだということなんです.(Chris Clark)

顎の高さまで引き上げることなどいろいろな手のレベルについてのクレージーなことや、手の高さやボディのプリパレーションなどにある程度意識して漕ぐ.できるだけ艇の状態に近い感じで再現することが必要ですが、実際私が本来よりも厳格にできなかったことで選手達にはあまりよくなかったことがあります.また、選手達がエルゴテクニックでなく、よいローイングテクニックを守っていくことをしっかり確認する必要があります.(Dan Roock)

エルゴでは自分の手や脚をよく見ることができます.台船からでは窮屈さとか握りの強さとか何がおこっているのかみることは困難です.バックルがどう動いているかみれば手に何がおこっているかわかることが多いのです.または、リカバリーで両手がかなり開いていれば、私は内容のないピースの最後について語ろうとしているのではなくて、まさにやろうとしていることなのですが、リカバリーで両手の間隔が本当に開いていれば、通常は握りが強すぎてかなりテンションがかかっていることがわかるのです.

これがエルゴでの問題であると私は思うのです.これは選手が自然にスカイアップしたりキャッチでギャザーアップ(意味不明:訳者)したりする傾向と関係しています.ユーモアのセンスが必要だと思います.そして、道具をつかって多くのつまらないことをしたり手元にあるすべての手段を使うのです.(Todd Jesdale)

エルゴでの長い持久漕は退屈なものだという評価が確立しております.パートナーは、音楽をかけたり窓を開けて気を紛らわせたりクルーが練習しているのがみえるジムの一隅へエルゴを移動させたりして、退屈さを受け流すようにします.気を紛らすことは自分のテクニックを向上させようとすることを忘れない限りはいいことです.エルゴセッションの最後の数分にさしかかったら、特にテクニックに注意を払う必要があります.疲れるとテクニックが鈍ってきます.そのような変化と闘うのです.レースのファイナルストレッチにいると考えて、他クルーを抑えてトップにたってパフォーマンスをキープする必要があると考えてください.

スキーやほかの持久的スポーツを時々エルゴに変えてエルゴを休むことも悪くありません.バスケットボールで走ればピックアップのよい練習になり、雪解けの時期に野外で走ったり、自転車に乗ったりすることは、持久力を養成するために続けているエルゴのよいブレークになります.(Rich Davis、セントポール校コーチ)

[訳: 舟山裕士, Coaching the Erg (US Rowing Winter Issue, 2001)]

Copyright Tohoku Univ. Rowing Club. All Rights Reserved.

© 2024 東北大学漕艇部

テーマの著者 Anders Norén